半導体システムの熱性能を設計する際に重要なパラメータとは

小信号や中電力の半導体デバイスは、いくつかのサブコンポーネントで構成されており、それぞれが放熱に寄与しています。このブログではNexperiaのデータシートに記載されている熱パラメータの定義を紹介し、半導体デバイスの内部構造が全体の熱挙動に与える影響を設計者に分かりやすく説明します。

放熱に寄与するパッケージのサブコンポーネント

図1Aはワイヤボンド半導体デバイス(SOT23など)の構造における主なサブコンポーネントを表しており、リードフレーム、半導体ダイ、ボンディングワイヤ、封止材などから構成されています。大電力アプリケーションの場合、図1Bに示すようにボンディングワイヤの代わりにフレーム接続(一般にクリップボンド・パッケージと呼ばれる)が使用されています(CFP3など)。デバイスから周囲環境への放熱を高めるために表面積の大きな端子(ヒートシンク)が追加された別の種類のデバイスパッケージもあります(図1CのDFN2020D-3はその一例)。最後に、非常に高温のアプリケーションの場合、ヒートシンクと組み合わせたクリップ・フレームパッケージを使用することも可能です(図1DのCFP15Bはその一例)。

図1:半導体デバイスの構造と、各種パッケージとヒートシンクの組み合わせによる放熱手法
図1:半導体デバイスの構造と、各種パッケージとヒートシンクの組み合わせによる放熱手法

熱抵抗の意味を理解する

熱抵抗とは電気抵抗の熱バージョンであると考えることができます。この考え方は放熱設計をする際も有効で、デバイス内の各サブコンポーネント間の熱抵抗を考慮する必要があります。ある物理的な2点間の熱抵抗R(X-Y)は、2点間の温度差ΔT(X-Y)をその経路で損失した電力P(X-Y)で割ったものと定義され、次のように示されます。

ここで、XとYは対象の熱システムにおける基準点であり、Nexperiaでは通常、Xを半導体デバイスの接合部(Tj)としています。Yはパッケージのハンダ点または周囲の環境温度です(図2参照)。Nexperiaの小信号デバイスではフットプリントの異なる標準PCB上で熱抵抗を測定しています。デバイスのデータシートには各種PCBで測定したRth(j-a)値が記載されています。この値はJESD51-14規格で定められているTDI法(Transient Dual Interface Method)を用いて測定します。

 

図2:半導体デバイスからの放熱経路
図2:半導体デバイスからの放熱経路

Nexperiaにおける熱パラメータの定義

各サブコンポーネント間の熱抵抗は次のように定義されます。

接合部と周囲環境の間の熱抵抗Rth(j-a)

システム全体の熱抵抗です。パッケージ、ハンダ接合部、PCB、場合によっては熱設計に関連する他のコンポーネントが含まれています。

接合部とハンダ点の間の熱抵抗Rth(j-sp)、または接合部とマウント・ベースの間の熱抵抗Rth(j-mb)

パッケージ外部の基準点を、放熱の主要経路であるピンやパッケージのヒートシンクに設定した場合のデバイスの熱抵抗です。接合部とマウント・ベース間の熱抵抗は主にヒートシンク付きパッケージの場合で使用し、接合部とハンダ点の間の熱抵抗は主に小型の表面実装デバイス(SMD)やデュアル・フラット・ノーリード(DFN)パッケージの場合で使用します。

接合部と上面の間の熱抵抗Rth(j-top)、または接合部とケースの間の熱抵抗Rth(j-c)

ジャンクションからデバイス上面の最も高温になる箇所までの副次的な放熱経路の熱抵抗値です。このパラメータは上部冷却を使用しないアプリケーションでは使用せず、提供もされません。

ハンダ点と周囲環境の間の熱抵抗Rth(sp-a)

パッケージデバイスを含まないシステム全体の熱抵抗です。基準点は常にデバイスの主要な放熱経路に接続されています。一方、周囲環境の基準点は常に周囲の外気温度(通常25℃または室温)です。

接合部から上面までの係数Y(j-top)

この係数は接合部からデバイス上面の最も温度が高い箇所の間の温度差を表すもので、デバイス全体の消費電力と相関があります。厳密には温度差と電力損失経路は異なるため、熱抵抗ではありません。そのため、NexperiaではRの代わりにYで表記しています。

まとめ

一般的に半導体デバイスメーカーのデータシートには熱抵抗のパラメータが記載されていますが、その意味が明確に説明されていません。この記事ではNexperiaのデータシートに記載されている熱抵抗パラメータの定義を紹介し、半導体デバイスのサブコンポーネントが全体の熱挙動に与える影響を設計者に分かりやすく説明しています。詳細についてはNexperiaの『Diode Application Handbook(ダイオード・アプリケーション・ハンドブック)』をご覧ください。

 

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